Auther : ねっつん
レイチェル・リンド
・・・・「10人の子供を育てて2人を死なせた」貫禄十分のおせっかいおしゃべりおばさん。
酸いも甘いもかみ分けた、百戦錬磨の村のご意見番、それがリンドのおばさんです。
こういう人、地域や会社に必ずいるんじゃないでしょうか。
うわさ好きででしゃばり、普段はいるとちょっとやっかいなんだけど、
いざ事が起こったときは(特に冠婚葬祭など)おそるべき行動力とリーダーシップを発揮し断然頼りになるおばちゃん。
この作品のリンド夫人は、古今東西のそういうおばさんの感じが随所にとてもよく出ていました。
そこで、このコーナーでは「レイチェル・リンド語録」と題しましてレイチェルの登場シーンをまとめて行きたいと思います。
緑=レイチェル 朱=ねっつんの感想
1章 あらすじへ
*(ナレーション)折りしもマシュウの時ならぬ晴れ姿を見かけたレイチェル・リンド夫人は、
この地味なお隣に一体何が起ころうとしているのか、マリラに問いただそうとグリーン・ゲイブルズへと駆けつけた。
*何ですって!孤児院から男の子を!?
でもマリラ、一体何でそんな気になったんだね?アタシには何の話もなかったじゃないか。
*ねえ、マリラ。はっきり言わせてもらえばあんたたちはとんでもないマネをしでかそうとしてるんだよ。
見も知らぬ子を家へ入れる、それも人頼みで。
*だけど孤児院の子はいけないよ!
つい先だってもモリソンの孤児院から来た子がやったって話を聞いたがね、井戸の中に毒薬を投げ込んだんだよ!
すんでのところで一家全滅しかけたっていうじゃないか。
もっともそれは女の子だったらしいけどね・・・。
(マリラ)あら、うちは女の子をもらうんじゃないんだよ。
まさか女の子なんか・・・・
*はあ・・まるで夢を見てるようだ。
それにどう考えてもかわいそうなのはそのみなしごだ。
マリラとマシュウは子供のことについちゃ何にも知らないんだもの。
あの二人が子供を育てるなんて・・・。
7章 あらすじへ
*日頃病気ひとつしたことのないアタシが2週間も寝込んだんだからねえ。よっぽど悪性の流感だったんだよ。
ところでマリラ、例のもらい子のことでうわさを聞いたんだけど本当にもうびっくりするような・・・・。
*災難だったねえ。返してしまうわけにはいかなかったのかい?
*ちょっと待って。あんたは大変な責任をしょいこんだことになるんだよ。
そこんとこが分かってないようだね。
あんたたちは子供のことときたら何の経験もないし、その子の本当の性質だってちゃんと分かってるわけじゃないんだろう?
ま、あんたの気をくじこうってわけじゃないけど・・・。
*(マリラ)とにかくあの子を呼んできましょう
いるの?
*なるほどね・・・器量で拾われたんじゃないことは確かだね。
*ひどくやせっぽちで器量が悪いんだね、マリラ。
さ、ここへ来てアタシによく顔を見せとくれ。
まあ・・それにひどいそばかす。
おまけに髪の赤いこと。まるでにんじんだね。
あ、さあさ、ここへおいで。
*こ、こんな恐ろしいカンシャク持ちは見たことがないよ。
*あんたもよっぽど物好きだね。あれを育てようっていうんだから。
*マリラ・カスバート!あんたまさかあのカンシャク持ちの肩を持とうっていうわけじゃないだろうね!?
*そ、わかりましたとも!これから私もよくよく気をつけることにしましょう!
どこの馬の骨だかわからない孤児のご機嫌がそんなに大事なのかねえ。
いいえ、アタしゃ怒っちゃいませんよ。その点は大丈夫。
あんまりあんたが気の毒で怒る気にもならないよ。
これからもあの子には手をやくだろうからね。
*10人の子供を育てて、2人を死なせたこのアタシが、ひとつだけ忠告しておきましょう。
あの手の子供には、なまぬるいお説教よりもビシッというムチのほうがよっぽど効き目があるっていうことをね!
*こんなことになってしまったけどマリラ、時々はうちに来てちょうだい。
もっともアタシのほうは当分お邪魔に来ないだろうがね。
何しろあんなに剣突くくったり恥をかかされたのは生まれて初めてだからね!
*(マリラ)とにかくいい恥をさらしたもんだよ。
リンドさんは今日のことをそこらじゅうに言いふらして歩くだろうよ。
*(マシュウ)そりゃあアンのほうが正しくはないかな。
あのおせっかいのおしゃべりばあさんやっつけたのはいいことだ。
*さあさあ、お立ちなさい。
もちろん許してあげますとも。アタシも少し言いすぎたけど、気にしないでおくれ。
確かにあんたの髪はずいぶん赤いけど、アタシの知っていた子で小さいときは赤かったのに
大きくなったらすばらしい金褐色に変わってしまった子がいたわ。
あんただってそうならないとは言えないじゃないか。
*少しぐらいカンシャク持ちでも素直だったらそれでいいんだよ。
ウソつきやずるい子供よりどれだけマシか知れやしない。ねえ、マリラ。
あんたがたがこの子を引き取ったからといって、もうお気の毒さまなんて思わないよ。
8章 あらすじへ
*(村の子供たち)すごいカンシャク持ちなんだって!
リンドさんにくってかかったって話だよ。
違うわ、つかみかかったのよ!
*(マシュウ)あ、おせっかいばあさんだ。わしは部屋へ・・・。
*いや、実はね、マリラ。まったくこの子にはたまげるよ。まさかあんたがあんなことをさせたんじゃないだろうね。
*あのおかしな帽子を見た時、アタしゃずるずるっと床の下へ落ち込じまいそうだったよ。
*(マリラ)リンドさんがおかしいって言われるのはね、色が何であろうと帽子を花で飾ったりすることなんだよ。
*(マリラ)あんたにそんなかっこうをさせるのはあたしに常識がないせいだと思われるんだよ。
あたしが笑い者になってるんだよ。
だからリンドさんがわざわざ忠告しに来てくださったんじゃないか。
12章 あらすじへ
*(マリラ)あの子はきっと気がどうかしちゃったんだよ。正気の子だったらあんな振る舞いはしないだろうからね。
気がどうかしてないとしたらよくよく悪い子だ。
どうもレイチェルは初めっから正しかったようだ。
14章 あらすじへ
*(ナレーション)アンの固い決意を読み取ったマリラは、それ以上アンを説き伏せようとはせず、
レイチェル・リンドに相談することにした。
10人も子供を学校にやったんだから、こんな時どうしたらいいか知っているはずだ。
*アタシの意見を聞きに来られたんだろうから言いますがね、マリラ。
ティリーに聞いた限りではフィリップス先生のほうに落ち度があるとアタシは思うね。
*もちろんそんなことを子供たちに言うのはよくないし、
先生が昨日カンシャクをおこしたあの子を罰したのは当然だね。
でも今日のは違いますよ。
ほかの遅れた者たちも、アンと同じように罰しなければならないわけだからね。
それに罰として女の子を男の子と一緒に座らせるっていうのは感心しないねえ。
穏やかじゃないもの。
*アンはどういうわけか人気があるらしいねえ。
あの子がほかの子達とそんなにうまくやっていけるなんて思いもよらなかったけどね。
*ま、アタシだったらしばらくの間、あの子の好きなようにさせるだろうよ。
(マリラ)じゃ、レイチェル!あんたはあの子が家にいるのを許してやったほうがいいと!?
そうさね、つまりアタシなら
あの子が自分から言い出すまでは二度と学校のことは口に出さないね。
見てなさい、一週間とたたないうちにあの子は自分から進んで学校に戻るようになるよ。
反対に今すぐあの子を行かせようとしようもんなら、今度はどんな大騒動を起こすか知れないしね。
全くフィリプスさんは先生としちゃあ全然ダメだね。
あの人のやり方はほんとになってない。
小さな子供たちはまるでほっといて、クイーン学院を受けさせようとする大きな生徒にばかりかかりきってるんだから。
16章 あらすじへ
*(ダイアナ)リンドのおばさんは自分のイチゴ水をとても自慢してたけど、
それよりずっとおいしいわ。ぜんぜん味が違うのよ。
*(アン)今日リンドさんのおばさんがダイアナのお母さんの所へ会いに行ったら
ダイアナのお母さんたらあたしのことカンカンに怒っていたんだって。
17章 あらすじへ
*(マリラ)まったく何がきっかけになるものやら。
いつまでたってもあの子はレイチェルの言ったように学校へ戻ると言い出さないんで気がもめていたところでしたからね。
何にしても助かりましたよ
18章 あらすじへ
*(マリラ)レイチェルのだんなさんが馬を出してくれるって言うし、
生きた本物の総理大臣を見るチャンスはこれを逃したら二度とはめぐってこないかもしれないですしね。
(ナレーション)というわけで、マリラは政治好きのレイチェル・リンド夫人と連れ立って
30マイルはなれたシャーロットタウンの町へ出発した。
*(アン)リンドのおばさんが言ってたけど、もし婦人に参政権があったら、政治もいっぺんによくなるんだって。
*(ダイアナ)ああ、せめてリンドのおばさんがいてくれたら・・・
19章 あらすじへ
*(ナレーション)アンはこのバリー家の大騒ぎのことを、その日の午後遅く、マリラの使いでリンド夫人のところへ行って初めて知った。
21章 あらすじへ
*(アン)本当に”会うは別れのはじめ”って言うけど、リンドのおばさんの言葉通り、世の中はそればかりね。
*(マリラ)それで、その牧師さん夫婦はレイチェルの家にお泊りになるんだろうね?牧師館が空くまで。
(アン)ええ、そうらしいわ。リンドのおばさんも馬車に乗ってらしたし。
*(ナレーション)その晩、マリラは去年の暮れに借りたさしこぶとんの枠を返しに行くと言って、
レイチェル・リンド夫人の所へ出かけて行った。
リンド夫人はこれまでもいろいろなものを人に貸していて、
なかには二度と戻るまいとあきらめていたものも少なくなかったのに、
その晩になるとどうしたことか、借り主の手によって次々と戻されてきた。
*(アン)リンドのおばさんはあの方も完全とは言えないっておっしゃったけど、
それにしても750ドルの年俸で完全な牧師を期待するほうが無理なんですって。
*(マリラ)ねえアン、近いうちにアラン夫妻をお茶にお呼びしたほうがよさそうだね。
レイチェルから聞いたけど、まだお招きしていないのはうちぐらいのものだっていうことだからね。
22章 あらすじへ
*(アン)リンドのおばさんがおっしゃったけど、
近ごろは混ぜ物が多くていいふくらし粉かどうかなかなか分からないんですって。
政府がこの問題を取り上げるべきだっておっしゃったわ。
23章 あらすじへ
*マリラ、マリラそんな所にいたのかね、大ニュースなんだよ!
(マリラ)どうしたって言うんだい?レイチェル。
驚くんじゃないよ、マリラ。評議会がね、とうとう新しい先生決めたんだよ。
それもよりによって女の先生だっていうのさ。
(マリラ)じゃあ・・9月からその女の先生が・・・。
(アン)その先生はどんな方?若い方?
年なんぞは問題じゃないよ。第一このアヴォンリーじゃこれまで女の先生をお願いしたことはないんだからね。
そんなことを始めるのは危険というもんだよ、マリラ。
24章 あらすじへ
*(アン)それにミセス・アランはとっても優しくて
”あんたが悪かったんだ”とか”これからはいい子になりなさい”とか言われないんですもの。
その代わりリンドのおばさんったら、来るたんびにそう言うのよ。
それにいい子になれっていくら言っても実際は無理だって思ってることがありありとわかる言い方するのよ。
25章 あらすじへ
*(マシュウ)今リンドのかみさんに会ったんだが、ダイアナがな・・・
27章 あらすじへ
*(ナレーション)アヴォンリーの村でマシュウが助けを求めていける女性といったら、
リンド夫人をおいて他には考えられなかった。
そしてマシュウから話を聞くとこの親切な夫人は、直ちに悩める男の手から重荷を取り去ってくれた。
*よござんす。私が責任を持ってお引き受けいたしましょう。
明日カーモディへ行きますから、さっそく生地を見てきますが
特に何かご注文がおありですか?
ああ、別におありにならない?それじゃ私なりの判断でやらせていただきますけど、よござんすね?
*私は濃い茶色の色がアンには似合うと思いますけど・・・。
あ、そうそう、ウイリアム・ブレアの店にとってもきれいな新柄がありましたよ。
仕立てもアタシがやる方がいいんでしょうね?
マリラがやるとなるとアンにあらかじめ悟られてしまってせっかくの趣向がフイになる恐れがありますものね。
いいえ!ちっともやっかいなことはありませんよ。
*(マシュウ)ただ・・その・・
ただ?
(マシュウ)つ、つまりその・・なんと言ったらいいか・・袖のふくらみ方が今と昔は違うようで・・・何と言うか・・・。
まあ!マシュウが洋服の流行に興味がおありとはね!
(マシュウ)いや・・その、つまり・・
ええ、よござんすとも。ちっとも心配はいりませんよ。最新流行のでやりますよ。
(マシュウ)その・・・袖がこう・・・
わかっておりますとも。ふくらみ袖にするんですね。アンのために大いに腕を振るって見せますよ。
私は前からアンの着ている洋服が気になってたんですよ。
マリラは地味で古めかしい服を着せておけばアンがしとやかでおとなしい娘に育つと思ってるらしいけど、
うっかりするとひがみっぽい性格になるのが関の山ですからねえ。
*(ナレーション)レイチェル・リンド夫人は、約束どおりさっそくカーモディブレアの店へ生地を買いに出かけた。
そして家に戻るとすぐ仕立てにかかり、その夜のうちにはあらかためどをつけるという早業であった。
*実はこれにはわけがあってね。
マリラにやってもらうとクリスマスにプレゼントする前にアンに悟られてしまうからと言ってね、
マシュウはアタシんとこへ持ち込みなすったんだよ。
29章 あらすじへ
*(アン)でもね、あたし自分が分別のある人になりたいと思わないわ。だってどう考えてもロマンチックじゃないもの。
リンドのおばさんはね、あたしがそうなれる見込みはないって言うの。
*(アン)リンドのおばさんはね、アラン牧師が奥さんの歩いた地面まで拝みかねないって言うの。
そして牧師のくせに、そんなに人間に愛情をそそぐのはどうかと思うって。
*(アン)リンドのおばさんはね、どんな小さい時のことでも、悪い子だったという話を聞くとショックを受けるんですって。
ある牧師さんが子供のときおばさんの家の台所からイチゴのお菓子を取った事があるという告白を聞いてから、
二度と牧師さんを尊敬できなくなったって言うの。
30章 あらすじへ
*(マリラ)だけどね、あの子を育てているのはこのあたしで
レイチェル、あんたじゃないんだからね。アンのことでとやかく口出しするのはやめてもらいますよ。
*やれやれ、わかったよマリラ。アタシがアンのことをとやかく言ったのは悪かったよ。
*(マリラ)あたしもちょっと言いすぎたようだけど、悪く思わないでおくれ。
気心の知れたどうしじゃないか。何とも思ってやしないよ。
*マリラがあの子をあれほど気に入るようになるとはねえ。
*(マリラ)やれやれ、あたしときたらさっきレイチェルに言われたのとそっくり同じことを言ってるんですよ。
レイチェルに言われた時にはあんなに腹を立てたくせにね。
32章 あらすじへ
*(ダイアナのジョセフィンおばさん)ほう・・・これはアヴォンリーのレイチェル・リンドの出品じゃないかね。
(ダイアナ)まあ、本当だわ。
(アン)リンドのおばさんも一等なんて・・・。
*いいえ、アタシは失礼させていただきましょう。
競馬のような不健全な娯楽からは、できるだけ遠ざかることにしておりますのでね。
34章 あらすじへ
*(アン)リンドのおばさんが言ってたわ。この不完全な世の中に完全なものはありえないって。
その言葉どおり、みんなが別々の道を歩き始めるのね。
*(アン)だってリンドのおばさんが言うには、ジェーンのお父さんは大変な偏屈でとてもケチなんですって。
*(アン)でもマリラ、リンドのおばさんはチャーリーにはとても無理だって言うの。
だってスローン一家はみんな正直者がそろっているのに、今政治の面で成功するのは悪者ばかりなんですって。
35章 あらすじへ
*(ルビー)ステイシー先生が今年でおやめになるってうわさ、本当だと思う?アン。
(アン)そんなうわさあたし信じないわ。だってあんなに一生懸命教えて下さっているんですもの。
(ジェーン)でもあたし、リンドのおばさんから聞いたのよ。学校委員にそうおっしゃったって・・・。
*(マリラ)そうかねえ。まあ背だけはどんどん伸びているようだけど。
(アン)リンドのおばさんにも言われたわ。
このまま伸びればもっと長いスカートが必要だし、目と脚ばかりになりそうだって。
*(ナレーション)グリーンゲイブルズにはレイチェル・リンド夫人が訪ねてきていた。
マリラが昨日の後援会の集まりを休んだので様子を見に来てくれたのである。
*(ナレーション)レイチェル・リンド夫人とマリラが客間でくつろいでいる間に、アンはお茶を入れビスケットを焼いたが、
さすがのレイチェル夫人も文句のつけようがないほど、軽く真っ白にできあがっていた。
*アンは本当にいい子になったもんだねえ。とても手助けになるだろ?
*3年前に初めて会った時は本当にびっくりしたもの。
まったくのところ、あの子のカンシャクはまだ忘れられないものね。
マリラ・カスバートは今にきっと悔やむ時が来るって、家の人に言ったくらいだよ。
*アタシはね、マリラ。自分が間違ってもそれを認めないような人間じゃありませんよ。
そんなことはこれまでただの一度もないからね。
私のアンを見る目は確かに間違っていたけれど、それも当然だろう?
世の中にあんな風変わりで思いもよらないことをしでかす子供なんているもんじゃないからね。
まったく他の子供と同じものさしで測ろうったって測れるもんじゃないよ。
この3年間のあの子の変わりようにはまったく驚くほかはないけれど、ことに姿がねえ、
ずいぶん良くなってきたようじゃないか。
37章 あらすじへ
*私は必ず開通式には出席するつもりですよ。
カーモディーに限らずアヴォンリーにとってもこれは大事件だよ。
第一シャーロットタウンから大勢お偉方が来るっていうじゃないか。
これを見逃す手はありませんよ。
*そういえばあの子、ずいぶん物静かになったねえ。
38章 あらすじへ
*(アン)だけどリンドのおばさんの言うとおり、
あたしが幾何で失敗しようとしまいと太陽は相変わらず昇ったり沈んだりするわね。
39章 あらすじへ
*まったく大したもんさね。
このアタシだって心からそう思うよ。
アン、あんたはアタシたちみんなの名誉だよ。とても誇りに思いますよ。
(アン)ありがとう、リンドのおばさん。
*じゃ、アタシもこれで。
村中のみんなにこの大ニュースを知らせなくちゃね!
*アンがやっと大きくなったら今度はグリーン・ゲイブルズを離れていく。あんたも何かと大変だねえ。
*それにしても娘を一人、町の学校へやるとなるとねえ。あんたたちの目の届かないところへ行くんだよ。
15歳の娘には何かと刺激が多すぎるんじゃないのかねえ。
*もし、もしもだよ、
アンが町の生活を気に入ってアヴォンリーのような田舎には帰りたくないなんて言い出したらどうするんだね?
43章 あらすじへ
*(マリラ)アンがカレッジへ進むつもりだって!?
おや、知らなかったのかね?アタしゃてっきり・・・。
(マリラ)どこでそんなこと聞いたんだね?
いえね、ルビーが間違いないって言うんだよ。
ジョーシーがその奨学金の話をした時のアンの目の色はただごとじゃなかったってね。
やっぱり町へなんか出すとろくなことはないねえ。
年とったあんたたちを置いて、学問のできることをいいことに勝手に大学へ進もうなんて、
優しい娘の考えることじゃないよ。
マシュウだって心臓の発作がこの頃多いって言うじゃないか。
あの子は何としても家に帰って学校の先生になるべきじゃなかったのかね。
*(マリラ)あたしはあの子にその目標に向かって進んでいいって書いてやりますよ。
やれやれ、まああんたも変わったもんさね。アンで驚かされたことは数え切れないけど、どうやらまだまだ続きそうだよ。
44章 あらすじへ
*電報を打ってアンを呼び戻したらどうだね?
アタシはマシュウの身に悪い事が起きるなんて思ってるわけではないけど、冬の寒さは心臓に良くないからね。
*(マリラ)それにマシュウの発作は今始まったことじゃないし・・・。
そりゃそうかもしれないけど、アタシが言いたいのはね、
こんな時のうのうと勉強してる場合じゃないってことなんだよ。
(マシュウ)いいや、アンを呼ぶ必要はありませんな、リンドの奥さん。
マシュウ!
*でもね、マシュウ。
あんたに養生してられたらマリラが大変なんですよ。
家畜の世話からまき割りからみんな・・・。
(マリラ)あたしのことは大丈夫よ
いえね、アタシだって10人を育てた親だもの、あんたの親心はわかるよ。
でも何もそんなにまでして女の子を・・・
*(マシュウ)とにかく、アンを呼んではいかんよ。
やれやれ、あんたがた兄妹が頑固だってことはよーく知ってたけど、これほど教育熱心だとは初めて知りましたよ。
頑固を通せるうちはマシュウ、あんたもまだまだ元気だってことかもしれないね。
46章 あらすじへ
*(マリラ)レイチェルは〝おごれる者は久しからず”とか言って女が高等教育を受けてもろくなことはない
なんて言ってるがね。あたしは全然そうは思わないよ。
*マリラ、マシュウはいるかね?
(マリラ)ああ、畑に出てるけど・・・何か急用でも?
そうなんだよ。
実はマリラ、例のうわさ話がどうも本当になるらしいよ。
アベイ銀行が今度こそ危ないんだよ。
*マシュウ・カスバート、うちの亭主が町から持ち帰った話なんだけどね、
どうもこの2,3週間がヤマだって話ですよ。
どこやらに貸した多額の融資が回収できなかったことは、間違いない事実だって言ってましたからね。
昨日は銀行に大勢押しかけてたっていうことですよ。
落ち着いてくださいよ。アベイ銀行の倒産は時間の問題だってことでね。
(マシュウ)と、倒産・・・。
いえね、もし本当にそうなってからじゃ大変だと思ってね。
確かカスバート家はアベイ銀行だけの取引だって聞いていたから・・・。
*あんたがたがお父さんの親しい友達だったアベイさんを信用したいのはよーくわかりますよ。
でもね、銀行の実権はもうおいの手に渡ってるそうだし、そのおいが新しい事業への融資に失敗したっていうんだからね。
*あのね、マシュウ。アタシの話が信じられないんならご自分で確かめるのがいいと思いますよ。誰か確かな人に会ってね。
なんならアタシもご一緒してもいいんだけど・・・。
(マリラ)そうですねえ、マシュウ。そうしたらどうですか?せっかくレイチェルが知らせてくれたんだもの。
47章 あらすじへ
*(マリラ)急いでスペンサー先生を呼んできておくれ!
ついでにリンドの奥さんに声をかけて!!
*(アン)リンドのおばさん。
マリラ・・・。
(マリラ)レイチェル!
(リンド夫人、脈を取り心臓に耳を当てます。)
(マリラ)レイチェル・・・。
ああ、マリラ・・・。どうにも・・しょうがないようだ。
(マリラ)マシュウ!マシュウ!
(アン)まさか・・まさかマシュウが・・・
そうなんだよ、アン、たぶん間違いないよ。
マシュウの顔見てごらん。アタシみたいにたびたびああいう表情目にした者にはわかるんだよ。
*これだよ!見てごらん!アベイ銀行が破産したんだよ。
マシュウはこれでショックを受けて、それで・・・。
マリラ、私があれほど言ったじゃないか。アベイ銀行は危ないって。
アタシの忠告さえ聞いていれば・・・。
(アン)やめて、リンドのおばさん。お願い・・・今は・・。
そ、そうだったね・・つい・・・。
ごめんよ、今さら・・アタシとしたことが・・・。
許しとくれ、マリラ。ほんとに悪かったよ
*こんなときに言いづらいことだけど、これからしなきゃならないことがたくさんあるんだから
あんたに気を確かにもってもらわないとね、マリラ。
ね、マリラ、あんたにもようくわかってるだろ?
どうしたんだねマリラ?気持ちはわかるけどあんたらしくもないねえ・・。
*今はマリラをそっとしておくしかないから、あんたたちにしっかりしてもらわなきゃならないよ。
とにかくまずマーチンは、バリーさんのところと監督のベルさんにこのことを伝えに言っておくれ。
カスバート家の親類に電報を打たなきゃならないけど、アンはわかるかね?
(アン、首を横に振ります)
ベルさんたちが見えたら万事テキパキと進めてくださると思うけどね。
あ、喪章を戸口に出さないといけないよ。きっとマリラが母さんの時のを取ってあるだろうからね。
せめてあんたにはしっかりしてもらわないと・・・。
*アン、遺体にはかせる白いソックスとウールの布を出しておくれ。
マシュウの体を拭くんだよ。あ、なければ、リンネルでもいいがね。
(アン)は、はい・・
49章 あらすじへ
*実はね、マシュウが亡くなってからアタシはアタシなりにずうっと考えていたんだけど、
どうだろうねえ、マリラ。この際いっそのことグリーン・ゲイブルズを売って気楽に下宿することにしたら?
(マリラ)レイチェル・・。
*思い切ったこと言うようだけど、アベイ銀行の倒産であんたのところも打撃だったろうし、
アンは夏休みが終わればレドモンドへ行っちまうんだからね。
アタシはそれが一番だと思うよ。買い手ならアタシが・・・。
*まあ急な話であんたも驚いたろうけど、ゆっくり考えてみたほうがいいと思うがね。
*(マリラ)あたしはレイチェルのところへ下宿することになるだろうがね。
*(アン)でもあたしを止めることはムダよ。
もう16歳半になるんだし、それにリンドのおばさんにいつか言われたように、ラバのように頑固ときてるから。
50章 あらすじへ
*へーえ、こうして腰かけるとほっとするよ。
なんせ一日中駆けずり回っていたもんだからね。
いや、まったく200ポンドの体重を二本の足で持ち運ぶのは用意じゃないよ。
太ってないっていうのは大したことですよ、マリラ。感謝しなくちゃね。
(マリラ)そうかもしれないね。
ところでアン、大学へ行くっていう考えを捨てたそうだね。ほんとに良かったと思うよ。
(アン)え?
あんたはもう女として必要な教育は十分に与えられたんだからね。
女が男と同じように大学へ行って、ラテン語とかギリシャ語とかいうバカげたものを詰め込むなんてアタしゃ感心しないよ。
(アン)でもね、リンドのおばさん。あたし大学へ行かなくてもラテン語やギリシャ語はやっぱり勉強するんです。
何だって!?
(アン)あたしこのグリーン・ゲイブルズで文化のコースをとって大学でやるものは残らず勉強しようと決心してるんですの。
アン・シャーリー!そんなことしたら死んじまうよ!
(アン)そんなことありませんわ。
*(アン)あたし、カーモディの先生になるでしょう。
それはどうかね。あんたはこのアヴォンリーで教えることになるだろうよ。理事会でそう決めたんだから。
(アン)リンドのおばさん!?
だって理事会はギルバート・ブライスと約束したんでしょ?
そうだよ。だけどギルバートはあんたが申し込んだと聞くとすぐ出かけてね。夕べ学校で理事会があったんだよ。
ギルバートはそこへ駆けつけると、自分は申し込みを取り消すから、あんたのを受け付けてくれるようにって話したのさ。
自分はホワイト・サンドで教えるつもりだからってね。もちろんギルバートはあんたのためを思ってここをあきらめたんだよ。
あんたがマリラと一緒にいたがっていることをよく知っていたからね。
ほんとにギルバートは優しくて思いやりがある子だよ。ずいぶん犠牲を払わなくちゃならないんだもんね。
ホワイト・サンドに行けば下宿代もかかるし、それにほら、大学へも行くんだろ?
そのためには学費を稼がなくちゃならないしね。
まあ、そういうわけで理事会はあんたを採用することに決めたんだよ。
家のトマスが帰ってきてその話を聞かせてくれたときにはとてもうれしかったねえ。
(アン)そんなことしてもらうわけにはいかないわ。ギルバートにそんな犠牲を払わせるなんて。それもあたしのために。
今からではどうにもならないよ。今日ホワイト・サンドへ行くとか言ってたそうだから、もう契約しちまってるよ。
それにあんたが断っても彼のためにはならないよ。
せっかくだからあんたがアヴォンリーで教えることにするんだね、アン。
なーに、もうパイ家の子供はいないからちゃんとやっていけるよ。ジョーシーが最後でほんとに良かったね。
この20年というものアヴォンリーの学校には誰かしらパイ家の人間がいたけどね。
あの子たちの役割といえば、この世は安息の地にあらずっていうことを先生たちに思い知らせるために違いないよ。やれやれ。
*あの子にはまだまだ子供子供したところがけっこう残っているようだね。
*(ナレーション)家に帰ったレイチェル・リンドは夫トマスにこう言った。
マリラ・カスバートはすっかり穏やかになったもんですね、まったく。
ねっつんの感想
こうして見ていくと、レイチェルのセリフを追うだけでも物語のゆくえがわかるようです。
ほとんど毎回登場して重要な役割をしてくれたレイチェルは、「赤毛のアン」の名わき役の一人でした。
人とのつながりやおせっかいな人が少なくなってきた現代ですが、
ふと周りを見渡してみれば、リンドのおばさんは私たちのすぐそばにも存在しているのです。